[自キ]BNY6XV3 ガスケットマウントキーボード作る①設計

キーボード

 普段使いの60%キーボードを更新したく、2pcsケースでのキーボードづくりに挑戦します。

方針

 現在使用しているキーボードはGH60互換のトレイマウント構成。しばらく使ってみて、いくつか気になる点が出てきました。

  • WKL風レイアウトの方が使いやすそう
  • トレイマウントだとブロッカーをきれいに作りづらい
  • マウント部だけ打鍵が硬くなる

 このあたりをまとめて解消したく、レイアウト変更も兼ねて新しく作り直すことにしました。

 構成は2ピースケース。デスク上のスペースは圧迫したくない一方で、指の付け根でCtrlや矢印キーは押したいので、横ベゼルは抑えつつ前後方向に余裕を持たせます。

 マウント方式はプレートマウント前提で、

  • トップマウント
  • ガスケットマウント

の両対応。どちらも未経験なので、とりあえず試してみる目的もあります。

基板設計

 プレートで保持する前提なので、基板は特に固定用の構造は持たせず、シンプルな長方形にしています。
USBは中央から引き出す構成。

 カスタムキーボードだとドーターボードで低い位置にUSBを配置するの多く思いますが、
個人的には基板直付けの高さがちょうど良いと感じています。

 基板裏実装の高さだと、ケーブルの下に指が入る程度の隙間ができて抜き差しがしやすいですし、
ドーターボードで低く配置すると、キーボードを軽く持ち上げるような動作がしづらくなります。

 USB部は蛇行させて引き出し、ケースにねじ止めできるようにしました。これにより背面のTypeC開口部をタイトに設計できます。

ガスケットマウント等であれば主流なドーターボードの方が色々と都合は良いと思いますが、上記のように今回は扱いやすさを優先して一体構造にしています。

 今回はbny6xv2やnitingaleb2と異なりダイオードは分散配置。
 コントローラは左下WKL部分に置き、STM32F072 + vial-qmk構成は前回から流用です。

ケース設計

 プレートは8か所に耳を設けています。USB引き出し部の都合でやや配置は制約が大きいです。

 マウント用の耳にはスリットを追加していて、マウント部の打鍵硬さに差が出にくいようにしたつもりでしたが、結果的にはあまり意味がありませんでした。

 ワッシャーを挟むことでトップマウント、フォームを挟むことでガスケットマウントに対応可能にしています。

 トップケースにはWKL風ブロッカーを追加。
 手前側は押しやすさを考えて傾斜をつけています。
 底面側にはマウント用のスペースとPCB固定用のねじ部を設けています。

 トップ, ボトムケースのマウント部はプレートから上下2mmの空間を空けてあります。
 トップマウント時は2mm分ワッシャーを挟み調整する想定です。
 ウェイトは未搭載の設計。必要性は感じつつも、コストと重量の面で見送り。

 チルト角は私の好みで6度。
 トップケースとボトムケースはソケット構造にはせず、単純に分割し突き合わせとしています。クリアランスが把握できていないのと、USB開口をシンプルにするためです。
 前回より内部空間には余裕を持たせています。

 USB開口はボトムケース側に設けており、その分中央部はちょっと広げている。

 底面のチルト部は斜め斜めにカットのみのシンプルな形状。ケースねじ止めは8点。

 基板・電子部品・プレート・ケース・ねじ類で約4万円。ここにスイッチやキーキャップが加わり、結構かかりますね。

組み立て

 今回はステンシルも発注しました。サイズが大きすぎたので適当にカットしています。イイ感じの大きさで発注するの欄どこだ、、、

 はんだ印刷は初めてでしたが、スキージ代わりに一度引くだけでそれなりに仕上がります。一部は量が多く出てしまいましたが、慣れれば安定しそうです。

 手はんだや爪楊枝での塗布と比べると圧倒的に楽なので、ステンシルは用意した方が効率が良さそうです。

 最終的にはホットプレートでリフローしつつ、必要な箇所は手直し。印刷がうまくいった部分は適量で実装できており、かなり良い感触でした。実装が自分用の1枚だけですから費用対効果はどっちでもというところですけれど。
 溶いたはんだをもう少し放置しておけばよかったですね。

 相変わらずのJLCCNC品質。糸面取りができていません。

トップケース

ボトムケース

組み立て問題なく行え、クリアランスなど次回以降参考にします。

裏面

背面

雑感

 的外れなことも多そうだけれど高級なカスタムキーボードを1つも買ったことない素人なりの思ったことである。

■ USB引き出し構造
 ポジティブな点として、USB接続部の引き出し構造はかなり良かったと感じています。想定通りに開口部へきれいに収まり、ケーブルの抜き差しもスムーズです。
 FFCや磁気ポゴピンなどを使わず、基板1枚構成で完結できるのも利点です。
 分離構成と比較した際の制約としては、キー位置より手前に配置できないことがあります。
奥まらせたい場合には厳しいですが、それでも大きく飛び出すことはなく、マウント用に確保した奥行きとほぼ面一に収まります。
 また、たわみに関しても問題なく、ガスケットマウントによる沈み込みにも十分対応できていました。

■ マウント・ケース設計(全体的な反省)
 マウントやケース構成に関しては、結果としてかなり外していたと感じています。
 そもそもカスタムキーボードについて深い理解がある状態ではなかったため、うまくいかないのは当然ではありますが、その分、実際に組んでみたことで理解は多少進みました。

■ プレートのスリットについて
 今回、プレートにスリットを設けてみましたが、これは完全に誤りでした。ミュート寄りの構成であれば有効な可能性はありますが、今回のように「鳴り」を重視する構成ではメリットはほぼ感じられません。
 また、そもそもガスケットマウント的な「沈み込ませる」方向の設計自体が、個人的にはあまり好みではないという前提もあります。
 今回の意図としては、トレイマウントで発生していたマウント部の硬さを打ち消すため、全体の均一化を狙ってスリットを入れています。つまり「付加する」ためではなく、「打ち消す」ための消極的な設計でした。
 対して実際には、アルミプレートおよび内部構造が想定以上にたわみ、均一にはならずむしろ悪化してしまいました。

 トップマウント時、マウント部(上下)は非常に硬い一方で、中央列は極端に柔らかくなり、
だるんだるんな状態になります。この状態から考えると、

  • マウント部を柔らかくしようとするとスリットを大きくする必要がある
  • そうすると中央部はさらに柔らかくなる

 という関係になり、結果として均一化には全く寄与していません。

■ トップマウントについて
 トップマウントで組んでみた印象としては、構造としては非常に良いと感じました。むしろ「トップマウントこそ本質で、他は妥協なのではないか」と感じる程度には好印象です。一方で、設計難易度はかなり高いとも感じました。
 今回の目的の一つは「打鍵の硬さをなくす」ことでしたが、トップマウント + アルミプレートの打鍵感は、特別嫌な硬さではなく、むしろこの硬さの方が好ましく感じられました。問題は先述した中身の柔らかさです。
 今回の構成では中央部が柔らかすぎたため、中央列を打鍵した際にケースにビビりが伝播し、非常に嫌な響きを生みます。一応の対策として下記が考えられます。

  • トップマウントしたプレート下面とボトムケースの間にフォームを入れる
  • スイッチフォームを使用する

 これにより制振効果は得られ、不要な響きはある程度軽減されました。ただし、どちらも根本的な解決にはなっていないと感じています。市販のトップマウントキーボードがどのようにこの問題を処理しているのかは気になるところです。

■ 音の方向性について

 今回は「鳴り物」としての構成を目指しているため、ミュート方向の設計にはあまり寄せたくないと考えています。もちろんミュート感自体を否定するわけではありませんが、今回使用しているパーツ構成と目指す方向性を考えると、あまり適していないと感じています。
 例えばゲーム用途であれば、VCに打鍵音が入るのを防ぐためにミュート構成は有効です。一方でthockyと言いつつ、実際にはミュート方向の要素が強いものも多く見られます。個人的な認識としては、ミュート感 = thocky ではないと考えています。
 フォームを詰める構成やthockyなチューニング自体を否定するわけではありませんが、静音用途以外でのミュート寄りの設計はあまり好みではありません。

■ ガスケットマウントへの移行
 トップマウントの課題を踏まえ、今回はガスケットマウントで進めることにしました。トップマウントの解がすぐに思いつかないというのも理由の一つです。また、トップマウントは結果的にスイッチフォーム前提になるのでは、という印象もあります。
 さらに設計段階から感じていたこととして、トップマウントは制振のためにケースウェイトがほぼ必須ではないか、という点があります。ただしウェイトは、パーツ数が増えコストが大きく上がち重量も増えるといった問題があります。
 個人的には「キーボードは軽い方が良い」という考えもあり、この方向はあまり取りたくありません。結果として、今回はコスト面も含めて妥協としてガスケットマウントを選択したという形です。

■ ガスケット構成と固定
 ガスケットマウントに切り替えると、問題はかなりシンプルになります。ガスケットマウント=中身とケースをフローティングさせる構造のため、ケース側に伝わる不要な振動や響きはほぼ解消されます。
 今回は3mmのL24 PORONを2mm程度まで圧縮して使用しています。ただし、ケース外周4点止めのみだと中央が浮く問題があります。圧縮を弱めれば改善は可能ですが、その場合は中身がずれやすく設計はトレードオフとなります。
 ボールキャッチについても検討しました。完全に同じ問題ではありませんが、仮にしっかり保持できたとしても、組み立て・分解のしやすさを優先するために積極的に採用したいとは感じませんでした。基本的にはしっかり固定したい。
 なお、クイックリリースの実装自体は市販品をねじ止めするだけなのでハードルは低いです。サイズ制約、8mm程度の奥行確保はありますが、ガスケット部と同程度であり極端にケースが大型化するわけでもありません。使いやすさやウケを考えると、採用する価値はあると思います。

■ 組み立て性
 今回のガスケットマウントはPORON貼り付けのみの構成のため、組み立て時には位置決め作業が発生します。さらにケースも突き合わせ構造のため、中身だけでなくケース自体も位置ずれが発生します。
結果として、仮締め→位置調整→本締めという手順が必要になります。
 また、キースイッチ・キーキャップはトップケースより高いため、ねじ止め前に裏返すとトップケースが脱落します。そのため、手で保持しながらねじ止めする必要があり、作業性はあまり良くありません。
 ぱっと思い出すとボールキャッチ、上面からのねじ止め、等のひっくり返さない構成があります。市販の2ピースキーボードがどのように解決しているのかは気になるところです。

■ ガスケット素材について
 ガスケット素材についてもいくつか試しました。特に得られたことがないので省きますが結果として、今回のようにシンプルに鳴りを重視する場合は、PORONを面で貼る構成が最もバランスが良いと感じました。
 シリコンガスケットでのピンタイプは位置決め、ソックスタイプは加えて中身をしならせるといった構成には適していそうです。
 ただし今回のようなコンセプトではこれで必要十分判断しました。一方で、コンセプトが異なる場合には、シリコンガスケットは非常に有効だと思います。
 そういえばキーボードのkeysnapなど流行っていたり取り扱いが薄かったりしていますが、ただのコの字シリコンなんて自作すればよくないですか、、、?それなら使いたいケースに適合させて作れるし。

■ 今後(再設計)
 基板はポカミスがあったため再設計します。合わせてスリット廃止、板厚 1.2mm → 1.6mmとします。
トップマウントやガスケットマウントでは、中身はある程度面で捉えた方が良さそうです。
 USB部分は応力がやや大きくなりますが、許容範囲と判断しています。なお1.2mmはGLP3.0対応の名残でもありました。
 本来であればケースもガスケットマウントに最適化して再設計したいところです。ただし、そのためだけに再度4万円をかけるのかという問題があります。トップマウントを詰める場合はさらに高額になります(おそらく6万円程度)。JLC以外を使えばさらに上がります。カスタムキーボードはとにかくコストが高い。

おわり

 配列が好みで4, 5万だったらベアボーンで買う方がめちゃくちゃお得ですよね。量産品の仕入れ値は知らないですけれど、自分で発注するより安くクオリティの高いものが買えるわけですから。どころか$200台で予算あれば十分いいベアボーンを買えてしまいます。配列に文句があるだけで大量の時間と金とを浪費してしまっているのか私は、、、。でも60%size+ansi+split spacebar+arrow keys layoutが欲しい。

 


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