人の目の話題
視界のうち良く見えている範囲は狭く、広く見るために私たちは無意識に眼球を動かしている。
眼球運動には大きく分けて2種類ある。
サッケード・・・跳躍性眼球運動
スムーズパシュート・・・活動性追跡眼球運動
サッケードは急な静と動の繰り返しであり、スムーズパシュートはゆっくりとした眼球運動である。
サッケードは通常1秒間に3回ほど行われている。
実際どのように眼球が運動しているかを意識してみると、見るという行為においてサッケードが占める割合が思いの外大きいことがわかる。
文章を読むときであれば、滑らかに追うのではなく視線をジャンプさせながら読んでいる。
このサッケードの速度はは非常に速く毎秒700度相当にも及ぶという。そのような速度でカメラを動かした映像を見てもブレブレだろう。
しかし私たちの視界はそのようにはならない。脳が処理していることによりこの視界のブレを感じないのだ。
サッケードに対して行う脳の処理を二つ挙げる
・サッケードの視覚抑制
・サッケードの空間定位
サッケード抑制
目をカメラのように考えるとサッケード中、網膜上には素早い視点移動に合わせ、高速に動く像が映っているはずである。
視点を移動させるとき眼球が回転するが、その際本来見えているであろう映像を知覚することはない
サッケード中の網膜像のブレに気づくことはなく、外界は安定して見える。
サッケード中、視覚は何を見ているのだろうか。脳はサッケード前後で受容野のリマッピングを行っていると言われている。
脳はサッケード直前、サッケード後の活動を予測しておりサッケード中の視覚は予測的に補完されている。
マイクロサッケード
視線がとどまっている間にも、私たちの目は細かくサッケードを繰り返している(マイクロサッケード)
マイクロサッケードにより人は完全に静止した世界を眺めるとき、刺激に変化がないため視界が喪失する。
このマイクロサッケードは安定した視界を得るために行われており、抑制されると視覚が消失する現象が起きる。
ある物体を注視していると視野周辺部の視覚能力が低下する。しかし注視しているものに意識が向くため周辺視野の喪失に気づかない。
実際意図的にマイクロサッケードの抑制を行うこともあり、針に糸を通すときなど精密な視覚情報が必要な時がそうである。
マイクロサッケードが多すぎると視覚が不安定になり、少なすぎると注視中の視覚が失われる。
サッケードの空間定位
サッケード中、網膜に映る像は移動するはずであるが、外界が動いたと感じずに知覚される
サッケード前後では網膜像がずれており、移動しているにもかかわらず見ている世界は微動だにしない。
人の視界は二種類の座標系で考えることができる
目や頭を動かしながら動くものを見るときの網膜上に映る物体の動きは非常に複雑になる
というのは目の動き、頭の動き、物体の動きのベクトル輪になり網膜座標系での動きは実際の物体の動きを意味しない
実際の絶対的な物体の動きを外界中心座標系と呼ぶ。
ボールが落ちているさまを右に移動しながら見ると、視界にはボールは斜め下に動いているように見える。
自分に対して物体がどう動いているかを知りたいのであれば網膜座標系でよい(斜め下に動く
しかし物体が外界でどう動いているかを知りたいこともある。
つまりこのとき外界に対する自分の動きと外界に対する物体の動きを分けて脳が処理する必要がある
人の脳は物体の運動と自己の運動を分けて処理することができる。
これを司る部分は、背景の動きに反応することで物体の実際の動きを見分けていることが分かっている
周辺視野と中心視野
中心視野を司る部分は色彩に対して鋭敏な錐体細胞が高密度に存在し物体の運動を鮮明にとらえることができる
周辺視野を司る部分には 明るさに対して鋭敏な細胞である桿体細胞が高密度に存在し物体が動いたかどうかをとらえることができる
メカニズムや詳細等は下記引用元参照
元文献内にて引用されている論文等も読んでみると面白かった
空間知覚:物体の運動知覚に関与する視覚 – 前庭情報統合の神経基盤
おわり
前の記事:曲線をなぞるブラウザAimゲーム「Curves game」 の再配布
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