ZE8000は2022年末発表当時、SNSでfinalがユーザーを8kサウンド!と勝手に煽り、発売されると勝手に期待したユーザーがなにが8kサウンドだ!と燃やし、話題になった記憶があります。
メーカーユーザーともに煽りが目につきやすかったからかあまりいいイメージのない本製品ですが、ノリでなくただ普通に製品と向き合った方からは向き不向きはあれどいい製品だという声が見られました。
わたしも当時欲しくはありましたがTWSをそこまで使わない環境とシンプルに高いなというところで購入せずにいましたが、2025年頭12000円でセールしていましたので購入しました。定価は3万円です。
ZE8000を購入するにあたり後継機であるZE8000MKIIがありますが、SNS調べでMKIIは無印の個性がなくなりより一般向けしそうなチューニングになっているという話でしたので、finalが意図している音は無印なのだろうなということで無印を購入しました。
独自のDSPや超高精度低歪ドライバ、AB級アンプ, 高音質パーツを売りにした通称8kサウンドのTWSイヤホンです。
外観
ケースは比較的大きなサイズに思います。これはイヤホン本体が大きめなので仕方ない部分はあります。

ケースはスライド開閉です。サイズが大きいながらスタイリッシュな感じです。
内部はパッケージの箱のような収まり方で、イヤホンが収まっています。これは本体もですが質感はプラスチック丸出しです。

プラ感丸出しな一方で、そのため筐体はサイズに対して非常に軽量です。有線でもこの重量に収まる製品は最近は多くない気がします。
軽量で負担の小さいイヤホンです。

イヤホン下部の端子から充電されます。ほんとお菓子の容器みたいです。
ケースに収納した後もペアリングが切れないときがある欠陥です。

裏にいろいろ書いてあります。本体のバッテリーは420mAhらしい。
あまり本体の電池持ちはよく感じません。これはTWS共通かもしれませんが

本体は何とも言えない、ダサい形状をしています。もちろん大事なのは音ではありますが、ダサいことには変わりありません。
イヤーピースは筐体を覆うような特殊形状で、5サイズついてきますので耳に合ったサイズを使用することとなります。適正より小さなサイズでも根元の部分だけでイヤホンの固定自体はできてしまうので、しっかり傘の部分で耳穴を塞げているサイズのものを選択する必要があります。
一応社外品も使えなくはないですが、そこまでするなら、と思わなくもないであります。
加えてノズル先端のフィルターも付属しています。

スマホ向けアプリで各種設定ができますが8ksound+をオンにするかどうかぐらいです。(DSP精度向上モードらしい)
ワイヤレスイヤホンは最低音量とステップが大きいというのはありがちなので、ボリュームステップの最適化機能は素晴らしいと思います。私は最低で設定し、小音量域で細かくボリュームステップできるようにしています。
設定やタッチ周りは使いづらいなと感じます。室内用途なのでどうでもいいかという気概です。

使用感
物議をかもした”8kサウンド”ですが、きっと多くのオーディオファンが想像していたような8kサウンドというのは超解像度のようなサウンドでしょう。finalは8kサウンドについて”音域、楽器や声のどこに注意を向けても、奥行きも含めて全てにフォーカスが合う”という表現をしています。実際に聞いてみると、言いたいこともわかるような、しかし8k??な気がします。
私の聴いた感覚としては、8kディスプレイのような、というよりは、”人の目のような”という表現がしっくりきます。オーディオファンのいう超解像度というのは8kディスプレイのような、の例えからいうと顕微鏡などで拡大することでより精細に見えるような、といえるような気がします。私の感じた”人の目のような”というのはそういった高性能オーディオとは異なりあくまでも私たちが生活しているときに聞こえる音のような、という意味です。実際の現実的なサウンドという意味であるならば私は納得できます。
音源に忠実な原音再生というような言葉がありますが、ZE8000は現実的な音再生と思います。
音の傾向としては味付けのない面白味のないチューニングです。しかし一方でつまらないサウンドではないのが面白いところです。味付けのないというのはフラット(?)という意味ではなく、むしろ表現豊かなのですが、誇張や鋭さがなく、いわゆるリスニングチューニングとはかけ離れています。finalでいうところのe500やe3000なども似たような傾向で、finalの目指している音作りの一つなのかなと思います。
ノイズキャンセリングについて一言でいうと、他社製品のようなものではなく外使いできるレベルではありません。外音除去という意味でのノイズキャンセリングではなく、あくまでノイズフロアレベルを抑制するようなノイズキャンセリングであることに注意が必要です。正味iemをしっかり押し込んでのパッシブノイズキャンセリングの方が強いぐらいです。
また音傾向についても味付けのないチューニングをしており、聴き疲れしないサウンドです。私は普段外使いではむしろ聴き疲れするようなチューニングのイヤホンを選択することが多いです。音楽を丁寧に聴くような用途ではなく、外界の喧騒から離れるために使用しているからです。
ノイズキャンセリング性能や聴き疲れしないチューニングから、TWSでありながら外使いに全く向いていない製品であると思います。
しかし逆に、室内での使用に抜群に向いているのがZE8000の特徴です。室内向けのTWSてなんだよとは思いますが、ZE8000はまさにそういった製品に思います。(である以上、店頭視聴ではマイナスの印象を感じやすいだろうなと思います。)
ZE8000の音質はハイエンドオーディオで求められるような高性能さとは異なります。あくまで”現実的”な音作り、面白味はないが聴き疲れのしないチューニング、一方でつまらなさのない音質の担保されたサウンド。普段据え置き環境で追い求めているのとは異なる”オーディオ”の形です。
SNS上で公式が”イヤホンというよりはハイエンドスピーカーでの聴取体験に近いと言えます。”と述べていますが、ハイエンドスピーカーのような「音質」ではなく、スピーカーでの「聴き方」という意味では(これでも若干異なるような気もしますが)私の感想はある種それに近いと思います。
もう一つ大きな問題があり、ZE8000は8000(フラグシップ)を冠するに相応しいのか?という話があります。個人的にフラグシップやハイエンド機というのは性能如何だけでなく高級感があることは前提と考えています。ここでいう高級感というのは、価値が変わらないこと, 色あせないこと, つまりブランド力であり、すぐ価値が落ちたりすぐ新作が出たり外から見て安っぽいものは該当しないというわけです。
ZE8000はどうでしょうか。1年もたたずにMKIIがでて、2年後には半額以下で売られています。また外観はダサく安っぽいです。どう考えてもA8000やD8000と同等のグレードとは思えません。
これは単なる名づけの問題なのですが、8000番は妥当なのか?と感じます。あるいはfinalにとってはこれ以上のTWSは作りえないという判断なのでしょうか。だとしてもダサい見た目はどうにかならんかったんかしら。実使用上問題があるところではないし私個人としては気にならないところですが。
私は定価でかつ当時購入したわけではないですが、室内専用TWSという謎ジャンルイヤホンであるところのZE8000は購入して良かったと思います。唯一無二の方向性であり一定の価値があると感じます。実際据え置き環境以外でZE8000を使用することも少なくなく、それはやはり有線を目指したTWSではない、現実的な音作りを目指したTWSだからこそ差別化できているわけです。求めているものが異なる以上ZE8000の酷評も嘘ではないと思います。
据え置きで求めるようなそれぞれの好みの、広い、豊かな、引き締まった、気持ちのよいチューニングを求めたり、より曲を、音を、音質よくしていったりとは異なる音楽鑑賞ってこういうもんだよなというような体験があります。
しかし一方で、では仮にZE8000が有線イヤホンとして発売されていたと仮定すると、私は購入していないだろうなと、はっきり、思います(コンセプトからしてズレておりありえないことですが)。
過度な煽りを期待していたのであれば別ですが、明らかに売り方から間違えており、8000番台がふさわしいとも思えないですが、素晴らしい製品とはっきり言えます。
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