FPSの視野角と感度の関係は自分に合った設定を考える上で重要です。
一度理解してしまえば単純なことですが、知ろうとする人自体が少なく、理解している人がとても少ないので解説します。
できるだけかなり嚙み砕いて記述しましたのでそんな当たり前のことを、という部分はどんどん飛ばしていってください。
はじめに
じゃあこの記事を追えば強い設定が知れるかというとそうではありません。
強い設定とは、いろいろな値をそれぞれの組み合わせで全て試行していき経験的に一番パフォーマンスが出た設定であると考えます。
そのため直接強さに関わるとは思えませんが、ここら辺を理解している人と理解していない人とではFPSゲームに対する理解度が全く異なります。それはSNSなどで設定に詳しい人が重宝されていることから明らかです。
これらは知らなくてもいい事、ではなくFPSをプレイするうえで最低限知っている必要がある事だと私は思っています。
仕組みを何も知らなければ、APEXの視野角を103に設定してVALORANTと揃えたとかいう素っ頓狂なことを平気で言ってしまうわけです。(嘘だと思う方もいると思いますがこのラインの方が実際多数派のようです。)
この記事は視野角と感度について、ゲーム内部でどのように計算されているのかという設定を行う上で最低限必要な知識を身に着けること、またその感覚を得ることが目的となっています。
具体的には視野角の変換と導出、ADS感度の計算方法と変換までを行います。
実際のゲーム間での視野角計算方法の差異
私にも混同していた時期がありました。fov90が一般的らしいぞということでBFをHor90に設定し、R6Sもfov90に設定し揃えたぞと思っていた時期が。しかしそれは誤りです。
CS:GOがfov90というのは有名です。ではR6Sのfov90、APEXのfov90、BFのHor90、OW90はどれも90ですが同じ視野角でしょうか?同じではありません。
実際どう違うのかというと
- R6Sfov90 → CS:GOfov106.26
- APEXfov90 → CS:GOfov89.25
- BF Hor90 → CS:GOfov90.27
- OW90 → CS:GOfov73.74
となっておりそれぞれ同じfov90であるにもかかわらず異なっていることがわかります。
これらの差異はアスペクト比というゲーム内FOVタイプが異なるによって引き起こされています。
アスペクト比とは
アスペクト比とは長方形における長辺と短辺の比率のことです。
ディスプレイは横長な状態で使用されるのが普通だと思いますので、FPSにおいては横と縦の画面比と言い換えることができます。
通常のPCモニターはアスペクト比 16:9 です。
これを比率としてあらわすと 16÷9 で 1.77… となります。
実際に計算を行う上では何対何ではなく、このアスペクト比率 長辺÷短辺 の値を使用します。
- 16:9→1.77…
- 4:3→1.33…
といった具合です。
一般的なPCディスプレイが16:9 であることはフルHDディスプレイの解像度が 1920×1080、つまり 1920÷1080=16÷9 であることから分かります。
アスペクト比と画面
ディスプレイが 16:9 なのだから使用されるアスペクト比は16:9しかないのではないかというとそうではありません。
ゲーム内設定でアスペクト比を変更することができます。
16:10, 3:2, 4:3, 5:4 等を選択することができます。
CS:GOを例に16:9と4:3を見てみます。
16:9 |
4:3黒帯(Black Bar) |
このように複数のアスペクト比を使用することができます。
そして上記画像を比較してみると16:9では壁が見えていますが、4:3では壁までの範囲しか見えていません。横方向の見えている範囲、つまり描画されている水平視野角(Horizontal FOV)が異なっていることがわかります。
一方で床から空の縦方向に見えている範囲、つまり垂直視野角(Vertical FOV)は等しいです。
このようにアスペクト比が変わるとFOV設定はそのままなのに見えている範囲、視野角が変わることがわかります。
またこの4:3画面を横に引き伸ばし黒帯をなくすことで4:3画面を16:9スケールの引き延ばしでプレイすることも可能です。視野角を考える際には引き延ばしについても考慮する必要があります。
引き延ばすことによって水平方向画面上では4:3の画面範囲がそのまま16:9のアスペクト比に拡大され変更されます。
アスペクト比と視野角の種類(FOVタイプ)
CS:GOでは、アスペクト比が変わると画面左端から右端の描画範囲、水平視野角HFOVが異なっていることが分かりました。
ではアスペクト比ごとに実際に視野角がいくつであるのかを見ていきます。
注目するアスペクト比は
- 16:9
- 4:3
- 1:1
の3種類です。基本的にゲームの視野角の計算方法はこの3つのどれかに当てはまるためです。
視野角が広い外側から 16:9(ピンク線) 、4:3(青線)、1:1(赤線)のアスペクト比における画面外枠となっています。
CS:GOは一般にアスペクト比 4:3 画面(青線)の時視野角が90度であることが知られています。(このことは振り向き分と画面端までのマウスの移動量を測ることなどして簡単に検証することができます。)
それではアスペクト比ごとの水平視野角HFOVを示してみます。(計算方法は先の記事で解説します)
- 16:9 →106.26度
- 4:3 →90度
- 1:1 →73.74度
CS:GOはこの3つのアスペクト比の画面においてこのような水平視野角が描画されています。
また 1:1 のアスペクト比というのは横と縦が同じであるということなので垂直視野角もこの 73.74度であるということです。
よって特別なことがない限り垂直視野角 VFOVは1:1HFOVと一致します。
よってなぜ代表アスペクト比がこの3種類なのかというと
- 16:9→現在のディスプレイのアスペクト比
- 4:3→昔のディスプレイのアスペクト比
- 1:1→ディスプレイの縦方向を基準とする場合
ということです。
ここまでで画面アスペクト比が変わると視野角も変わることが分かりました。
しかしアスペクト比 16:9 の画面のCS:GOの視野角の値 90度 がアスペクト比 4:3 に対応していることはややこしいです。
そこでアスペクト比を置き換えて、FOVタイプ を用いて表されます。つまりCS:GOにおいて
- 16:9FOV=106.26deg
- 4:3FOV=90deg
- 1:1FOV=73.74deg
このときCS:GOはFOVタイプ4:3における90度と言います。
また、ややこしいのですがCS:GOでアスペクト比4:3黒帯画面を16:9に引き伸ばすと、16:9画面が4:3相当になるのでこのとき 16:9FOVは90度となります。
垂直視野角 VFOV は引き伸ばされていないため 73.74度のままです。
4:3(引き延ばし) |
視野角が何度であるのかについて、何度であるかだけでなくFOVタイプ(アスペクト比)と共に記載しなければ意味不明であることが分かりました。
FOV90といったところで、1:1なのか4:3なのか16:9なのか16:10なのかアスペクト比が分からないと何も示せていないということです。
ゲームごとの基準視野角
ゲームごとにアスペクト比を変更した際に基準となる方向があります。
先ほどのCS:GOの画像を再度示します。
16:9 |
4:3黒帯(Black Bar) |
次にVALORANTの場合を示します。
様子が異なっていることが分かるでしょうか。
CS:GOでは4:3にすることで横方向の描画範囲が狭まりましたがVALORANTでは縦方向の描画範囲が広くなっています。
つまりCS:GOではアスペクト比を変更したとき縦方向、VFOVはそのままであるのに対し
VALORNTはアスペクト比を4:3にすると横方向、HFOVがそのままであることが分かります。
これの何が問題であるかというと、まずVALORANTは16:9HFOVが103であることが知られていますが、4:3(Black Bar)でプレイした際にはHFOVがそのままであるので、
4:3FOVが103となり、16:9FOVが118.36に変わってしまうということです。
VALORANTで4:3引き延ばしを行うと実際には縦方向の押し縮みになるということですね。
多くのタイトルではCS:GOと同じ方式ですが、このようにアスペクト比によって視野角が変わる特殊例があります。なので視野角を記述する際はFOVタイプを併記しなくては情報を伝えることができないということです。
視野角のイメージ
円を描いてみます。すると視点を中心として上空から俯瞰した状態となります。
視野角とは視野の角度ですから、図のように見えている範囲を扇形(青線)とすればその中心角が視野角となります。
その扇形に弦(オレンジ線)を引くことができます。この弦が周囲を映し出す画面になっているというわけです。
例えば自分から等距離に4人の敵(黒点)がいたとして、図中の矢印のように画面に射影されるわけです。
またこの4人の敵についてみてみると、自分からは等距離ですが、画面からの距離だと外側の敵ほど近くなっています。
というのは画面(オレンジ線)を上にスライドしていくと外側の敵が先に画面にぶつかります。この画面との距離感が画面に映るサイズ感と一致するということです。
なので等距離のモノでも画面中央と比べ画面端に映すとより大きく拡大されて見えるわけですね。
画面中央の方が角度の密度が濃く、画面端に寄るほど角度の密度が薄いことがわかります。
もう少し例を示します。円はプレイヤーの真上からの俯瞰図、矩形は画面上とします。
円の中心がプレイヤーの視点として円周上つまりプレイヤーから等距離な一に敵が5人いると仮定します。
ピンクで塗りつぶしている部分が画面に描画されている範囲、画面相当の角度とします。
ということで視野角についてこのようなイメージで話を進めていきます。
おわり
最初の話をするとゲームタイトルごとにFOVタイプが異なった表記をしておりCS:GOは4:3FOV、R6Sは1:1FOV、OWは16:9FOVです。
それぞれゲーム内で同じ視野角の値に揃えたところでFOVタイプが異なっているので何も揃わないということはわかったと思います。
FOVタイプが異なっていてはゲーム間で視野角を正しく比較することができません。(4:3FOV90と16:9FOV103はどれだけ異なるのかどっちがどれだけ広いのか?)
よって視野角を揃えるにはFOVタイプ間で値を相互に変換する必要があるというのが次につながる話です。
次の記事:FPSとFOV② 異なるアスペクト比に視野角を変換
コメント
最後の図だと球体の平面展開の仕方が正射影になっていますが、3Dゲームでは透視投影ではないのでしょうか?
ほんとですね逆になってる、、
そのうち修正しますありがとうございます。
差し出がましいかもしれませんが、他のMD0%の解説や図解や定義を見る限り平面展開が正射影として話を進めているように見えます。
このサイトの計算機は概ね正しいので実用性は損なわれにくいと思いますが。
ですね時間あるときにまとめなおす必要がありますね