アンバランスとバランス駆動方式を聴き比べてみる

オーディオ

 ドングルDAC Tanchjim spaceを使用してバランス接続とアンバランス接続とを聴き比べてみました。
 思っていたより明確な差があり、今後アンプを選ぶ際の勉強になりました。

はじめ

 バランス接続とアンバランス接続。
 バランス接続の方が「音がイイ」という意見が一般的ですがどうなんでしょうか。
 経験的には同じだと思って感じて生きてきました。
 でもじゃあどっちがどうなのか?なんてわざわざ真剣に聞き比べたことはなかったので比較してみます。評価といってもなんかすごい機材ですごい測定なんてしませんできません。官能評価です。耳で感じたモノが私にとってのすべてです。
 前提から結論まで全部私感覚と私の環境における感想でしかありません。詳しくないので。

 バランス接続って何ですかという話からすると、
 通常の3.5mmのやつはアンバランス接続で、3極プラグで共通のGNDを基準に左右の音信号が流れてきます。
バランス接続は4.4mm5極プラグで楽曲再生には内4極が使用されています。左右用に2本ずつ信号線があり、差動させています。
 アンプを見てみるとバランスアンプはアンプ回路が信号が2倍必要なためアンバランスに対して2倍必要になります。そのためアンプは高価で大きくなります。
それで何が違うの?という話ですが、それが一人一人意見が分かれていて議論を生んでいるわけです。
 例えばよくバランス接続はHOTとCOLDでノイズをキャンセルできるからノイズが減っていいんだという主張をされていますがそうなのでしょうか。そもそもの話バランス接続しないとノイジーだというあなたのオーディオ環境はどれだけノイズまみれなの?という話になりませんか。そのバランス駆動の性質はイヤホンのケーブルには適用できない気がします。

やり方

使用する機材を紹介します。

デジタル出力
 パソコンのUSB端子、Youtubeとfoobar2000から音楽を再生しました。特にこだわりなし。
 DACとの接続はTopping E2x2付属のAtoCケーブルを使用しました。特にこだわりなし。

DAC
 Tanchjim spaceドングルDACを使用しました。
 採用理由としてはまず3.5mmと4.4mmの出力の両方がついていること。
 またありがちなシングルエンドの音が良くない問題がないと思われること。ICにCS43131が使用されていてアンプ部も担っており差がつけられていないと思われる。両者のアンプが同等でないと比較などできません。アンプ部が異なっていれば、それは接続の差よりもアンプの性質の差が支配的であることは想像に難くないです。
 余談だけどこのICを乗っけていてもアンプ回路を別途載せているドングルDACも多い。その方が音はおそらく良いと思われる(spaceはアンプに関しては貧弱に感じる)ものの、サイズが一回り大きくなっている。Spaceはこのコンパクトなサイズがとてもいいよね。
 音がいい。音が良くないと評価できない。DACの性能は据え置きと比べても遜色ない(らしい)。前述のとおりアンプに関しては官能的に弱いと感じるが、DAC性能にひ弱さは感じない。
 これがベストかと言われると目をそらしますがアンバランスとバランスを同じ条件で聞き比べられる機器って少ないと思うあとセール時1万円と安い。

イヤホン
 Final A8000を使用しました。
 異論は多分に認めますが、個人的に(イヤホンの比較評価用はなく)音源や機器の評価に非常に適していると感じています。単純に音質がいいというのはありますが、加えてベリリウム振動版による優れた過渡応答(らしい)も寄与していそうです。私が官能的にそう思っているという話です。もっと向いているものがあったら教えてください。
 イヤーピースはFinal Eタイプです。
 ケーブルはBIGMANGO-SUMIRE 4.4mmを使用しました。特にこだわり無し。
 4.4mm-3.5mm変換プラグはCayinのPH-35Xを使用しました。オーディオ的には変換プラグでも音が変わると言われそうですが目をつぶってください。特にこだわり無し。

結果など

バランスとシングルエンドでは音が違うのか?
 音は違うと感じましたが、何も言われずに聞き比べさせられて意識せずに聞き比べたらわからないという程度の差でした。が、確かに差はあり意識して聴き比べるとブラインドでも分かる差は感じました。

一言でどんな差があったかというと、
・アンバランスは音が中心に寄る。
・バランスは音が若干緩い。
 という感じでリスニング用途にはバランスを好む人が多そうで、この意味ではポタオデ民にバランス好きが多いのはおかしなことではないかなと思ったり。

 アンバランスは音が中心に寄るというのは理論的にはシンプルにクロストークというやつだと思います。アンバランスは左右のGNDが共通であることから左右が干渉してわずかに音が混ざってしまうしまうというようなものですね。
 同じ環境で比較した場合、たしかにバランス接続はクロストーク耐性が優秀です。ただ良し悪しでいってしまうと好みである。
 またクロストークはアンプの外、イヤホンのみで起こっているわけではありません。DAC/AMPのスペックなど見てみるとチャンネルクロストークやセパレーションというスペックがあります。つまり接続方法以前に接続されている機器の性能が関わってくるということで、クロストーク性能の良いシングルエンドシステムとクロストーク性能の普通なバランスシステムとで聞き比べてみるとバランス接続した後者の方がクロストーク耐性が悪く音が中心に寄って聞こえてしまうのではないだろうか。上流のスペックの方が支配的であり気にせずにバランス接続の方がクロストークが無くていいねなんて言う事はナンセンスかもしれません。

 バランスは音が若干緩いというのは言葉選びが難しいところなのですが、理論的にはダンピングファクター、出力インピーダンスというやつだと思います。バランス接続はその性質上出力インピーダンスがシングルエンドの2倍になります。また出力インピーダンスの影響はイヤホンの負荷としての小ささにも関わってきます。
 ダンピングファクターが高いと振動版の制動力が上がり音が締まるらしいです。経験的には出力インピーダンスが非常に低いアンプはそういう印象ですし、ダンピングファクターが低い(らしい)真空管アンプではその逆の印象を持っているのでこの差異はダンピングファクターによるものとしておきます。
 検索してみると、イヤホンの持つ周波数特性とは別に抵抗成分にも周波数特性がありこの影響により加えて周波数特性が変化してしまう。この抵抗成分の影響の小ささがダンピングファクターで、大きいほど影響が小さく本来の音(?)で鳴らせるということだそうな。
 同様に出力インピーダンスもアンプのカタログスペックに書いてある性能指標です。出力インピーダンスが小さいからシングルエンドのアンプを使おうというより、まず出力インピーダンスの小さいアンプを使おうという話になります。そして良し悪しあるのかというと最終的には好みになってきます。

 個人的には聞き比べた結果感じた違いはこの二点ぐらいでした。こだわりのない人にとってはどうでもいい違いだと思います。

結論

 まずバランス駆動するのか、アンバランス駆動するのか、というよりも先にDACアンプの性能の方がそこの差異に対して支配的である以上接続方法単体ではどちらが優れているとかお話にならないという話です。
 実際にあるバランスより高性能なアンバランスの方がクロストークは少ないし、あるアンバランスより出力インピーダンスの低いバランスの方が音は締まります。
 余談ですがだったらGND分離のシングルエンドが音質的には最強なのでは……?と思ってみたり。

 DACやアンプやイヤホンヘッドホンの違いによる大きな変化に対してバランスかシングルエンドかの駆動方式の変化は小さく、リケーブルやイヤピや電源アクセサリーのような、ある程度固まったシステムを調整する要素と思います。あくまで、上流を決定したうえでそのアンプに空いている二つの穴のどちらから出る音が好みであるかの差でしかない一つの味変要素と私は感じます。 
 そして身も蓋もないことを言えば、クロストークがなければないほどいいのか、ダンピングファクターが大きければ大きいほどいいのか、と言えばリスニング的には好みである部分も大きい。工業製品としてみればクロストークは少なく出力インピーダンスは小さいほうがいいに決まっていますが。

 ではどちらの方がいいのかと言えば、音の品質的な差というより音の性質的な味変要素と感じた。何なら多少でもこだわっているのであればDAC/AMPのスペック的にはどちらの接続方式でも音質(音の品質)は十分足りているはずですし、接続方法が~というのであればスペック的に十分な機器を使用しているはずです。

 なので駆動方式ではなく、実用面やメタでの好みの方が要素としては大きいと思う。
 音量が倍取ることができて、メーカーが力を入れていて、ポタオデでは標準で、変換プラグを用意すればシングルエンドにも対応できる4.4mmプラグ。一方でリケーブル・リプラグしないとバランス接続に対応できないイヤホンやヘッドホンには改造しないと対応できない。
 バランス駆動には対応できないが、一般に標準的で、コンパクトな3.5mmプラグ。

 一長一短です。私はヘッドホンのバランス化とかめんどくさい、あるいは付属ケーブルが3.5mmだったりバランスケーブルがオプションだったりで買い足すのがめんどくさい、みたいな感じで3.5mmを好んでいます。音質的にもシングルエンドの方がいいかなとは思っていますが、それ以前に実用面でシングルエンド派です。
 と思っていたんですが最近の中華イヤホンは標準が4.4mmケーブルだったり、ハンドメイドリケーブルが軒並み4.4mmだったりで悩ましいところでございます。

 他の目線でいえばメーカーがバランス駆動をリファレンスとして作っているからバランス接続の方がいいという話も聞き、シングルエンドでは音作りに意図しない影響を与える可能性があります。これも他の要素の方が強く効いてくるものの、確かにその通りでその場合バランス接続で使用することが正しいなと思うし納得できます。

バランス接続がしたいだけ

 ポタオデとは話はそれるのだけど、ゲーミングデバイス界隈において、バランス接続をすることによって音が良くなるという風潮がある。

 バランス接続ができるかどうかが機器選びの指標になっていたりする。何なら3万円のA/IFに5000円のバランス接続ができるようになるアンプを接続するのが流行っており音がめちゃくちゃよくなるらしい。使ったことがないから断定できないが、それ普通に内蔵のPHONE OUTの方が音質いいんじゃないか……?と思ってしまう。それに双方異なるアンプを通しているのだから駆動方式によって音が良くなっているかどうかなんて評価のしようがない。

 しかしそんなことは見当違いで、なんでもいいからオーディオに興味を持ってくれることが大事だし、音の性質や品質よりもインフルエンサーの真似をするというコンテンツなのだということはわかっている。でも機器に対して失礼だしオーディオを楽しみたいのならば正しく楽しんだ方が健全だよなと思うのだ。バランス接続ができるからという理由でなくて、それぞれの機器の音色や性能などで選んだ方が自然だし、余計なお金もかからない。

 バランス接続批判ではなくバランス接続であることを音質の価値基準にして機器を選んでいる人批判。

おわり

 偉そうにしゃべっておいてやってること官能評価しましたおわりなのだけど。あなたはどっちが好き?私はどっちでもいいやってね。
 個人的には駆動方式の違いというより、はっきりとクロストークの差異や出力インピーダンスの差異が体験できて、今までの経験と結びついた点が学びになりました。
 音がどうだという際に、こうだからこうなんだと言えるようになった要素が増えた感じ。
 駆動方式がくだらない論争というわけではないけど私の中では要素としては小さいものとして納得して捉えていくと思います。正味所謂カタログスペックの一つだよね。


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